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無人航空機の飛行の安全に関する教則

6.運行上のリスク管理

6.2 気象の基礎知識及び気象情報を基にしたリスク評価及び運航の計画の立案|無人航空機の飛行の安全に関する教則

令和4年9月5日に国土交通省から公開された「無人航空機の飛行の安全に関する教則」の内容について備忘録として挙げています。

以下の内容は全て国土交通省航空局「無人航空機の飛行の安全に関する教則」から引用しています。

6.2 気象の基礎知識及び気象情報を基にしたリスク評価及び運航の計画の立案

6.2.1  気象の重要性及び情報源

(1) 無人航空機における気象の重要性

無人航空機を安全に飛行させるための重要な要素の一つが気象である。

航空法では「当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること。」とされている。これは目視可能な距離外での無人航空機の飛行を禁止するだけではなく、近距離であっても無人航空機の飛行状況や他の物件との安全な距離が確保されていることを目視で確認できない雲中や濃霧等の気象状態では無人航空機を飛行させてはならないことを意味する。

安全な飛行を実施するためには、まず一般的な天気予報だけではなく、どのような気象情報や予報が提供されているかを理解する必要がある。そして、自らの作業内容、時間、環境に応じて、雲や視程障害、風向風速及び降水等、自ら行う飛行に影響する気象情報を適切に入手、分析して、離陸から着陸に至るまで支障のある気象状況にならないことを確認した後に飛行を開始しなければならない。

(2) 安全な飛行を行うために確認すべき気象の情報源

参考となる気象情報には、以下が挙げられる。

● アメダス
● 気象レーダー
● 実況天気図、予報天気図、悪天解析図

インターネットを活用した気象情報の入手も有効である。

(3) 天気図の見方

天気図には、各地で観測した天気、気圧、気温、風向、風力や高気圧、低気圧、前線の位置及び等圧線などが描かれている。実況天気図、予想天気図から気圧配置、前線の位置、移動速度などを確認する。

等圧線の感覚から風の強弱を知ることが出来、等圧線の感覚が狭いほど風は強まる。

1) 天気記号
快晴・晴れ・曇り・雨・雪・霧などを表す記号である。

2) 風
天気記号に付いた矢の向きが風向を表す。風が吹いてくる方向に矢が突き出しており、観測では、16又は36方位を用いているが、予報では8方位で表す。矢羽根の数が風力(気象庁風力階級表による風力の尺度)を表す。風力0~12までの13段階で表す。

3) 気温
天気記号の左上の数字で、摂氏の度数を表す。

4) 気圧
大気の圧力をいい、単位はヘクトパスカル(hPa)で標準大気圧(1気圧)は、1013hPaである。

5) 等圧線
気圧の等しい点を結んだ線をいう。

6) 高気圧
周囲よりも相対的に気圧が高いところを高圧部といい、その中で閉じた等圧線で囲まれたところを高気圧という。北半球では時計回りに等圧線と約30度の角度で中心から外へ向かって風を吹き出している。高気圧の中心部では下降気流が発生し一般的に天気は良い。

7) 低気圧
周囲よりも想定的に気圧が低いところを低圧部といい、その中で閉じた等圧線で囲まれたところを低気圧という。北半球では反時計回りに低気圧の中心に向かって周囲から風が吹き込む。中心部では上昇気流が起こり、雲が発生し一般的に天気は悪い。

8) 冬の天気
冬の悪い天気の代表は「雪」と「風」である。シベリア高気圧が優勢になり冬の季節風の吹き出しが始まると、まず気象衛星の雲写真に沿海州から日本海へ流れる帯状の雲が現れる。冬型の天気の典型は西高東低といわれるもので、天気図では西側に高気圧、東側に低気圧という気圧配置で、日本海側に雪をもたらす。

9) 春と秋の天気
日本の天気を支配するのは冬のシベリア高気圧と夏の太平洋高気圧であり、春と秋は両高気圧の勢力が入れ替わるときである。このとき日本付近に両気団の境界ができ、前線が停滞し、広い範囲に悪い天気をもたらし、1週間くらい雨が降り続き、低い雲高や視程障害をもたらす。

10) 前線
温度や湿度の異なる気団(空気の塊)が出会った場合、二つの気団はすぐには混ざらないで境界が出来る。境界が地表と接するところを前線という。
a.寒冷前線
発達した積乱雲により、突風や雷を伴い短時間で断続的に強い雨が降る。前線が接近してくると南から南東よりの風が通過後は風向きが急変し、西から北西よりの風に変わり、気温が下がる。
b.温暖前線
層状の厚い雲が段々と広がり近づくと気温、湿度は次第に高くなり、時には雷雨を伴うときもあるが、弱い雨が絶え間なく降る。通過後は北東の風が南寄りに変わる。
c.閉塞前線
寒冷前線が温暖前線に追いついた前線で、閉塞が進むと次第に低気圧の勢力が弱くなる。
d.停滞前線
気団同士の勢力が変わらないため、ほぼ同じ位置に留まっている前線で、長雨をもたらす梅雨前線や秋雨前線がこれにあたる。
e.梅雨前線
梅雨前線とは、四季の変わり目に出現する長雨(菜種梅雨、梅雨、秋霖など)のうち、特に顕著な長雨、大雨をもたらす停滞前線のことである。

6.2.2  気象の影響

(1) 安全な飛行のために知っておくべき気象現象

1) 雲と降水について
雲には10種雲形と呼ばれる10種類の雲の形がある。
上層雲として巻雲・巻層雲・巻積雲が、中層雲として高層雲・乱層雲・高積雲が、低層雲と下層から発達する雲として積雲・積乱雲・層積雲・層雲がある。このうち層雲系の雲では連続的な降水が、積雲系であれば断続的で驟雨性(しゅううせい)の降水を伴う傾向がある。

2) 風
a.風と気圧
風とは、空気の水平の流れをいい、風向と風速で表す。空気は、気圧の高い方から低い方に向かうが、この流れが風である。等圧線の間隔が狭いほど風は強く吹く。
b.風向
風向は、風が吹いてくる方向で、例えば、北の風とは北から南に向かって吹く風をいう。風向は360度を16等分し、北から時計回りに北→北北東→北東→東北東→東のように表す。
c.風速
風速は空気の動く速さで、メートル毎秒(m/s)で表す。風は必ずしも一定の強さで吹いているわけではなく、単に風速と言えば、観測時の前10分間における平均風速のことをいう。
風は地面の摩擦を受けるため、一般的に上空では強く地表に近づくにつれて弱くなる。変化の度合いは地表の粗度(樹木や建物などによる凹凸の程度)や風速の大きさによって異なる。一般に地表の粗度が大きいほど、高さによる風速の変化は大きくなる。
d.突風
低気圧が接近すると、寒冷前線付近の上昇気流によって発達した積乱雲により、強い雨や雷と共に突風が発生することがある。日本付近では、天気は西から東に変わるため、西から寒冷前線を伴う低気圧が接近するときは、突風が発生する時間帯を予測することが出来る。
e.海陸風
気温差があると、気圧差が生じて風が吹く。海陸風は海と陸との気温差によって生じる局地的な風で、日本では、日差しの強い夏の沿岸部で顕著に見られる。地表付近において、日中は、温まりやすい陸上に向かって風が吹き、夜間は、冷めにくい海上に向かって風が吹く。風が入れ替わるときには、ほぼ無風状態になり「朝凪」「夕凪」と呼ばれる。
f.山谷風
山岳地帯に現れる風の一種。昼間は、日射で暖められた空気が谷を這い上がる谷風が吹き、夜間は冷えた空気が山から下りる山風が吹く。
g.風力
風力は、気象庁風力階級表(ビーフォート風力階級)により、風力0~風力12までの13階級で表す。
h.ビル風
高層ビルや容積の大きい建物などが数多く沈設している場所及び周辺に発生する風で、強さや建物周辺に流れる風の特徴により分類される。(剥離流、吹き降ろし、逆流、谷間風、街路風などがある。)
ビル風は周辺の風より風速が早く継続して吹いていて、その建物群の配置や構成によって吹く風の種類が異なる。
i.ダウンバーストについて
ダウンバーストとは、積乱雲や積雲内に発生する強烈な下降流が地表にぶつかり、水平方向にドーナツ状に渦を巻きながら四方に広がってゆく状態をいう。その大きさは数百mから10kmにも及ぶ。その中でマイクロバーストと呼ばれるものは、直径が4km程度以下の下降流で、範囲は小さいが下降流はダウンバーストより強烈なものがある。発生時間は数分から10分程度のものが多く、通常の観測網では探知されない局地的なものである。

(2) 気象に関する注意事項

無人航空機は、運用可能な動作環境が愚弟的に明示されている。運用可能な範囲内であっても、低温時や高温時には大きな影響を受けることが予想される。特に気温の低い場合はバッテリーの持続時間(飛行可能時間)が普段より短くなる可能性があるため注意が必要である。

地表面が暖められると上昇気流が発生するため、広い面積の太陽光パネルやアスファルト・コンクリートの地面が多い市街地は注意が必要である。また、広い運動場のような場所では、強い日射により上昇気流がおこりつむじ風が発生する可能性がある。

6.2.3  安全のための気象状況の確認及び飛行の実施の判断

(1) 気象状況の把握と飛行の実施の判断

安全のため気象条件を考慮した判断をする場合、降雨時、降雪時、霧の発生時や雷鳴が聞こえるときは飛行の延期や中止が望ましい。