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無人航空機の飛行の安全に関する教則

4.無人航空機のシステム

4.5 機体以外の要素技術|無人航空機の飛行の安全に関する教則

令和4年9月5日に国土交通省から公開された「無人航空機の飛行の安全に関する教則」の内容について備忘録として挙げています。

以下の内容は全て国土交通省航空局「無人航空機の飛行の安全に関する教則」から引用しています。

4.5 機体以外の要素技術

4.5.1  電波

(1) 電波の特性

1) 直進、反射、屈折、回析、干渉、、減衰
電波の性質の種類と特徴は以下のとおりである。電波には障害物等の後ろに回り込む回析という性質、異なる媒質にぶつかると透過、反射あるいは屈折する性質、周波数の近い電波が重なると電波干渉が発生しお互いを減衰させる性質などがある。2.4GHzの電波は解析しにくく直進性が高いため障害物の影響を受けやすくなる。

性質の種類 性質の特徴
直進 電波は、進行方向に商売物がない場合は直進する。
反射、屈折 電波は、2つの異なる媒質間を進行するとき、反射や屈折が起こる。
常に反射の法則(入射角と反射角の大きさは等しい)が成り立つ。
回析 電波は、周波数が低い(波長が長い)ほど、より障害物を回り込むことが出来るようになる。
干渉 電波は、2つ以上の波が重なると、強め合ったり、弱めあったりする。
減衰 電波は、進行距離の2乗に反比例する形で重力密度が減少する(進行距離が2倍になると電波の電力密度は1/4になる)。
周波数により特性は異なるものの、電波は水中では吸収されて大きく減衰される。

2) マルチパス
送信アンテナから放射された電波が山や建物などによる反射、屈折等により複数の経路を通って伝播される現象をマルチパスという。反射屈折した電波は、到達するまでにわずかな遅れを生じ、一時的に操縦不能になる要因の一つとなっている。マルチパスによって電波が弱くなり一時的に操縦不能になった場合は送信機をできるだけ高い位置に持ちアンテナの向きを変えて操縦の復帰を試みる。

3) フレネルゾーン
フレネルゾーンとは無線通信などで、電力損失をすることなく電波が到達するために必要とする領域のことをいう。無線通信での「見通しが良い」という表現は、フレネルゾーンがしっかり確保されている状態であることを意味する。
フレネルゾーンは、送信と受信のアンテナ間の最短距離を中心とした楕円体の空間で、この空間は無限に広がるが、電波伝搬で重要なのは第1フレネルゾーンと呼ばれる部分である。このフレネルゾーン内に壁や建物などの障害物があると、受信電界強度が確保されず通信エラーが起こり、障害物がない状態に比べて通信距離が短くなる。
このフレネルゾーンの半径は周波数が高く(波長が短く)又はお互いの距離が短くなればなるほど小さくなる(2.4GHz帯、5.7GHz帯の場合、2地点が100m離れたケースでは2m以下)。地面も障害物となるため、フレネルゾーンの半径を考慮してアンテナの高さを十分に確保する必要がある。

(2) 無人航空機の運航において使用されている電波の周波数帯・用途

無人航空機の運航において使用されている主な電波の周波数帯は、2.4GHz帯、5.7GHz帯、920MHz帯、73MHz帯、169MHz帯である。169MHz帯は主に2.4GHz帯及び5.7GHz帯の無人移動体画像伝送システムの無線局のバックアップ回線として使用される。電波の周波数帯や出力、使用するアンテナの特性、変調方式、伝送速度などによって通信可能な距離は変動する。

(3) 無人航空機以外も含めた日本の電波の利用状況(一等)

電波の特性として、波長が長いほど直進性が弱く情報伝達容量が小さくなるが減衰はしにくい。逆に波長が短いほど直進性が強く情報伝達容量が大きくなるが減衰はしやすい。

無人航空機の制御用通信に多く使用される極超短波は10cm~1mの波長(周波数300MHz~3GHz)で、超短波(1~10m、周波数30~300MHz)比べて直進性が更に強くなるが、多少の山や建物の陰には回り込んで伝わることが出来る。伝送できる情報量が大きく、小型のアンテナと送受信設備で通信できることから、携帯電話や業務用無線、アマチュア無線、無人航空機など多種多様な移動通信システムを中心に、地上デジタルTV、空港監視レーダー、電子タグ、電子レンジ等幅広く利用される。

マイクロ波は1~10cmの波長(周波数3~30GHz)で、直進性が強い性質を持つため特定の方向に向けて発射するに適している。伝送できる情報量が非常に大きいことから、衛星通信、衛星放送や無人航空機の画像伝送、無線LANに利用される。レーダーもマイクロ波の直進性を活用したシステムで、気象レーダーや船舶用レーダー等に利用される。

(4) 電波の送信、受信に関わる基本的な技術

送信機のアンテナから発射される電波の強さは、方向により異なる(無指向性のアンテナの場合は、アンテナの周囲に対して同様に発射される)。アンテナの角度は調整できるので、操縦時の送信機の持ち方や無人航空機の位置を考慮して最適なアンテナ角度を設定する必要がある。

(5) 電波の特性に伴って発生する運行上のトラブルの調査・分析(一等)

外来電波や他の設備・機器からのノイズにより無線設備の通信環境が不安定になることがある。電波環境の調査として、スペクトラムアナライザを用いて、使用している周波数と同じ電波が現地エリアで使用されている状況や、他の設備・機器からノイズが発生していないかを確認する方法がある。様々な無線局が散在する市街地での飛行のためには、電波環境の調査は非常に重要である。

(6) 電波と通信に関わる基本的な計算(一等)

カテゴリーⅢ飛行を行うにあたっては、電波と通信に関わる基本的な計算(周波数帯や送受信間距離を踏まえ必要となるアンテナの高さ等)について理解しておく必要がある。

1) フレネルゾーン半径と必要なアンテナの高さ
フレネルゾーンの半径:R(m)、送受信アンテナ間距離:D(m)、使用周波数:f(Hz)、波長::λ(m)とすると、これらの間には以下の関係がある。
R=√(λ×(D/2)^2×(1/D))

上記式を用いた、送受信アンテナ間距離:100m、使用周波数:2.4GHzのときのフレネルゾーンの半径の具体的な導出方法を以下に示す。

上記の前提条件より
● 送受信アンテナ間距離:D=100m
● 使用周波数:f=2.4×10^9Hz
● 波長:λ=(3×10^8)÷(2.4×10^9)=0.125m(光の速度を3×10^8m/sとした場合)
と求めることが出来る

以上より、フレネルゾーンの半径Rは
R=√(λ×(D/2)^2×(1/D))=√(λ×(D/4))=√(0.125×(100/4))≒1.77m
よって理想的なアンテナの高さは、1.77m以上となる。

なお、実際には不レベルゾーン半径の60%以上のアンテナ高さが確保できていれば、フレネルゾーンに障害物がない場合と同様の通信品質を確保できるといわれている。この条件にて必要なアンテナの高さを計算すると、1.77×0.6≒1.1m以上となる。

4.5.2  磁気方位

(1) 地磁気センサの役割について

地磁気センサにより、気球の磁気を検出することで機体の向き(方位)や姿勢を知ることが出来る。地磁気センサは正常な方位を計測しない場合があるが、それは磁力線が示す北(磁北)と地図の北に偏角が生じるためである。

(2) 飛行環境において磁気に注意すべき構造物や環境について

地磁気の検出には、鉄や電流が影響を与える。一般的に影響を与えるものは、高圧線や変電所、電波塔、鉄材を多く使用された建物、新幹線や電車の鉄道、自動車、鉄板など鉄材が多く埋め込まれた場所などが挙げられる。機体の姿勢や進行方向に影響を与える場合がある。

(3) 無人航空機の磁気キャリブレーションについて

無人航空機の磁気キャリブレーションとは、飛行前にその場所の地磁気を検出して方位を取得し、GNSS機能やメインコントローラ―に認識させることである。磁気キャリブレーションが正しく行われていないと、機体が操縦者の意図しない方向へ飛行する可能性がある。飛行させる場所により、地磁気の方向は異なるので、磁気キャリブレーションを行うことが重要である。

4.5.3  GNSS

(1) GNSSについて

GPS(Global Positioning System)は、アメリカ国防総省が、航空機等の後方支援用として開発したシステムである。GPSに加え、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、日本の準天頂衛星QZSS等を総称してGNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)という。

GNSSは最低4個以上の人工衛星からの信号を同時に受信することでその位置を計算することが出来る。機体に取り付けられた受信機により最低4基以上の人工衛星からの距離を同時に知ることにより、機体の位置を特定している。なお、安定飛行のためには、より多くの人工衛星から信号を受信することが望ましい。

(2) GNSSとRTKの精度

GPS測位での受信機1台の単独測位の精度は数十mの精度である。測位方式として固定局と移動局の2つの受信機を使用するRTK(Rea. Time Kinematic)やDGPS(Differential Global Positioning System)などの技術が確立され、これらの測位方式はcm~数mレベルの精度の高い測位が可能である。

(3) GNSSを使用した飛行における注意事項について

自動操縦では手動操作よりも高精度なGNSS測位が必要である。自動操縦のためにあらかじめ地図上で設定したWay PointはGNSSの測位精度の影響を受けるため、精度が悪化した場合は実際の飛行経路の誤差が大きくなる。

GNSSの測位精度に影響を及ぼすものとしては、GNSS衛星の時計の精度、補足しているGNSS衛星の数、障害物などによるマルチパス、受信環境のノイズなどが挙げられる。受信機は、周囲の地形や障害物の状況を考慮して設置する必要がある。一般的に位置精度は、水平方向に比べ高度方向の誤差が大きくなる。