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無人航空機の飛行の安全に関する教則

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4.1 無人航空機の機体の特徴(機体種類別)|無人航空機の飛行の安全に関する教則

令和4年9月5日に国土交通省から公開された「無人航空機の飛行の安全に関する教則」の内容について備忘録として挙げています。

以下の内容は全て国土交通省航空局「無人航空機の飛行の安全に関する教則」から引用しています。

4.1 無人航空機の機体の特徴(機体種類別)

4.1.1  無人航空機の種類と特徴

回転翼航空機(マルチローター)、回転翼航空機(ヘリコプター)及び飛行機などが該当する。

回転翼航空機(マルチローター)及び回転翼航空機(ヘリコプター)は、垂直離着陸や空中でのホバリングが可能という特徴がある。一方で、飛行機は、垂直離着陸やホバリングは出来ないが、回転翼航空機に比べ、飛行速度が速く、エネルギー効率が高いため、長距離・長時間の飛行が可能という特徴がある。さらに、回転翼航空機のように垂直離着陸が可能で、巡航中は飛行機のように前進飛行がかのうとなる、両方の特徴を組み合わせたパワードリフト機(Powered-lift)もある。

4.1.2  飛行機

(1) 機体の特徴

飛行機は回転翼航空機と比べ高速飛行、長時間飛行、長距離飛行が可能であるが、一般に、安全に飛行できる最低速度が決められており、それ未満での低速飛行が出来ない。水平離着陸には広いエリアが必要であり、高度な操縦技能と飛行制御技術が必要である。一方、適切な機体設計によって無操縦・無制御でも飛行安定が達成でき、仮に故障などによって飛行中に推力を失っても滑空飛行状態になれば、すぐには墜落しない。

飛行機は、翼に揚力を発生させて自重を支えることができるのが特徴である。このため比較的少ないエネルギーで飛行し、長距離飛行が可能になる。エレベーター(上下ピッチ方向)、エルロン(左右ロール方向)、ラダー(左右ヨー方向)、スロットル(推進パワー)の複合的な操縦で飛行する。離着陸には機体のサイズに合わせた滑走路が必要となる。推力により前進し空気を掴み揚力が生まれるので、回転翼航空機とは違いホバリングや後退、横移動は出来ない。横方向の移動はバンクターン(旋回)で行う。姿勢安定装置を使用しない場合はバンクターンの操作はエルロンとエレベーターの複合である。過度の低速飛行や過度の上昇角度、過度の旋回半径小により翼面から空気が剥離する失速という状態に陥ることがある。失速時は舵の操作が効かなくなる。これは飛行機にとって極めて危険な状態である。失速を回避するためにも操縦には高い技術が求められる。特に技能が必要なのは手動操縦における離着陸である。

離着陸含めて自動飛行を行う場合は、発射装置や回収装置などの地上設備が必要となる場合がある。

(2) 大型機(最大離陸重量25kg以上)の特徴

大型機(最大離陸重量25kg以上)は主翼面積が大きくなるため、よりペイロード(積載可能重量)を大きくすることができる。ガソリンエンジンなど推進動力の選択肢も広がるのでより長距離・長時間飛行も可能になる。25kg未満の飛行機に比べて風の影響も受けにくくなる。大型機は、事故発生時の影響が大きいことから、操縦者の運航への習熟度及び安全運航意識が十分に高いことが要求される。大型機は機体の慣性力が大きいことから、増速・減速・上昇・下降などに要する時間と距離が長くなるため、障害物回避には特に注意が必要である。緊急着陸地点の選定も小型機より広い範囲が必要となる。一般に小型の機体よりも騒音が大きくなるため、飛行ルート周囲への配慮が必要である。

4.1.3  回転翼航空機(ヘリコプター)

(1) 機体の特徴

回転翼航空機(ヘリコプター)は、垂直離着陸、ホバリング、低速飛行が可能であるが、これには大きなエネルギー消費が伴い、風の影響を受けやすい。同じ回転翼航空機であるヘリコプター型とマルチローター型で比べると、ヘリコプター型は1組のローターで揚力を発生させるため、回転翼航空機(マルチローター)に比べローターの直径が大きく、空力的に効率よく揚力を得る事ができる。

回転翼航空機(ヘリコプター)においては以下に示すような機構が必要であり、構造的に複雑となっている。

● ローターの回転面を傾けたり(機体を前後左右に運動させる場合)、ローターピッチ角を変えたり(上昇・下降させる場合)するために必要な機構(スワッシュプレート等)
● ローターの反トルクを打ち消したり、向き(ヨー方向)を変える操縦に用いたりするテールローター

(2)大型機(最大離陸重量25KG以上)の特徴

回転翼航空機(ヘリコプター)において最大離陸重量25kg以上の大型機では慣性力が大きく操舵時の機体挙動が遅れ気味になるため、特に定点で位置を維持するホバリングでは早めに操舵することが必要となる。また一般的に小型の機体よりエンジン騒音やローター騒音が大きくなる。

4.1.4  回転翼航空機(マルチローター)

(1) 機体の特徴

回転翼航空機(マルチローター)は機体外周に配置されたローターを高速回転させ、上昇・降下や前後左右移動、ホバリングや機体を水平回転させることが出来る。大きなエネルギー消費により、複数のローターを高速回転させ揚力を得て飛行するが、風の影響を受けやすく飛行の安定性を高めるため、フライトコントロールシステムを用いローターの回転数を制御し、機体の姿勢や位置を安定させている。

操縦は送信機に備わるコントロールスティック等を操作して行う。

ローターの数によってそれぞれ呼称が異なる(ローターの数 4:クワッドこぷたー、6:ヘキサここぷたー、8:オクトコプター)

モーター性能を同一とした場合、ローターの数が多いほど呼称に対する耐性が向上し、ペイロード(積載可能重量)が増える。

ローターの回転方向は、時計回転(CW:クロックワイズ)と半時計回転(CCW:カウンタークロックワイズ)の方向で構成され、反トルクによりの機体の回転バランスを保っている。

1) 上昇、ホバリング、降下

機体に備わる全てのローターを回転させ回転数を増加させていくと、機体重量以上の揚力を得ると上昇し始める。機体重量と揚力が釣り合い、対地高度が安定した状態を継続するとホバリングとなる。ホバリング状態からローター回転数を下げると降下する。

2) 前後、左右移動

機体の前後左右移動は、その指示した側のローターの回転数を下げ、反対側のローターの回転数を上げることで機体が傾き、ローター推力の合力が、指示した方向に傾くので、傾いた方向に機体が移動する。

3) 水平回転

ローターの反トルクバランスを崩すと機体の水平回転が始まる。

揚力を得ている状態で、右若しくは左回転を指示すると、指示した回転方向のローターの回転数が下がりトルクバランスが崩れ回転が始まる。

4) 回転翼航空機(マルチローター)と機体の動き

回転翼航空機(マルチローター)を操縦する際に、機体の動きを指示するために用いられる用語として以下のものがある。

● スロットル :上昇・下降
● ラダー   :機首方向の旋回
● エルロン  :左右移動
● エレベーター:前後移動

(2) 大型機(最大離陸重量25KG以上)の特徴

回転翼航空機(マルチローター)の最大離陸重量25kg以上の大型機の特徴としては、以下のものが挙げられる。

● 機体の体格寸法やローターのサイズやモーターパワーも大きくなり、飛行時の慣性力も増加し、上昇・下降や加減速などに要する時間と距離が長くなる。
● 離着陸やホバリング時の地面効果等の範囲が広がり、高度な操縦技術を要する。
● 飛行時機体から発せられる騒音も大きくなり周囲への影響範囲も広がる。